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【システム設計】ジュニア時代に陥りがちな「修正ループ」から抜け出す方法|経験者が語る設計フェーズの落とし穴
投稿日:2026.05.25
1. はじめに:終わらない「修正ループ」の恐怖と絶望
ジュニアエンジニアの皆さん、日々のシステム設計や実装において、次のような経験に頭を抱えたことはありませんか?
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「せっかく何日もかけて実装したのに、コードレビューで『ここが違う』『設計要件を満たしていない』と指摘され、根底からやり直しになった」
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「1つのバグを直したら、なぜか全く関係のない別の画面で新たなバグが発生し、そのループから抜け出せない」
これこそが、多くの開発者が若手時代に必ず一度は直面し、そして苦しむ「修正ループ」です。一度実装したコードや設計に対して、後から頻繁に手戻りが発生するこの状態は、開発者のモチベーションや自信を容赦なく奪い去ります。それだけでなく、プロダクト全体の品質低下、チーム全体の生産性低下、そして深刻な納期遅延を常態化させてしまう、非常に危険な状態です。
本ブログでは、数々の失敗を経験してきたシニアエンジニアの視点から、ジュニア時代に陥りがちな「設計フェーズの落とし穴」を解き明かします。「とりあえず動けばいい」という短期的な思考から脱却し、変更に強く、チーム全体が幸せになれる質の高いシステム設計を実現するための具体的なロードマップを解説します。
2. なぜ私たちは「修正ループ」に陥るのか?(心理的要因とシステムの腐敗)
設計フェーズで修正ループの種が撒かれてしまう背景には、ジュニアエンジニア特有の「心理的要因」と「経験不足」などが隠れています。
(1) 「動けばいい」というドーパミンと、目先の課題への集中
プログラミングを学び始めた頃、私たちは「エラーを出さずに画面が動いた瞬間」に強烈な達成感(ドーパミン)を感じてきました。そのため実務に入っても、「早く動くものを作って安心したい」「新しく学んだライブラリを早く試したい」という技術的好奇心や、目の前のタスクをこなすことばかりに意識が向きがちです。
その結果、システム全体の構造を俯瞰し、将来の変更を予測するという「抽象的で地道な設計プロセス」が後回しにされてしまいます。
(2) 「技術的負債の痛み」をまだ知らない
これが最も根深い要因です。プログラミングスクールでの学習や、小規模な個人開発、ポートフォリオ作成では、設計を軽視しても「自分が書いたコードだから全部分かる」ため、致命的な問題は起きません。
つまり、「設計を怠ったせいで、半年後の自分や、新しく入ってきたチームメンバーが保守の地獄を見る」という具体的な不利益(=痛み)を経験していないのです。痛みを伴う失敗を経験していないからこそ、設計の重要性を頭では理解していても、行動に落とし込めないのです。
(3) 設計軽視が生み出す「整理されていない巨大な図書館」
設計を軽視し、「とりあえず動くこと」だけを目標に場当たり的に書かれたコードは、「本が乱雑に積み上げられ、ルールのない巨大な図書館」に例えることができます。最初は本が少ないので問題ありませんが、蔵書(コード)が増えるにつれて崩壊が始まります。
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発生する問題 |
図書館での例え |
システム開発における具体的な影響 |
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可読性の低下 |
目的の本(歴史書など)がどのフロアのどの棚にあるか全く分からない。 |
ロジックが散財しており、コードの意図やデータの流れを追うのに膨大な時間がかかる。 |
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保守性の低下 |
新しく届いた本を、ジャンルに関係なく空いているスペースに無理やりねじ込む。 |
修正箇所が特定できず、無理なパッチ当て(If文の乱立など)を行い、予期せぬバグを誘発する。 |
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変更への脆弱性 |
一つの本棚を動かそうとすると、バランスが崩れて他の本棚もドミノ倒しになる。 |
小さな仕様変更(例:消費税率の変更)でも、システム全体の広範囲なコード修正が必要になる(密結合)。 |
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属人化の発生 |
本を適当に置いた「本人」にしか、どこに何があるか分からない。 |
新規メンバーがアサインされてもキャッチアップに数週間かかり、チームの生産性が一向に上がらない。 |
このように、マジックナンバー(意味不明な直接的な数値の直書き)の多用や、単一責任の原則に反した数千行に及ぶ巨大な神クラス(God Class)の存在は、後々の改修コストを爆発的に増大させ、修正ループを加速させます。
3. 「動けばいい」からの完全脱却:システム設計の「真の目的」
修正ループから抜け出すための第一歩は、「なぜ設計に時間をかけるのか」という根本的な目的を正しく理解することです。設計の真の目的は、「現時点で仕様通りに動くプログラムを作るため」ではありません。真の目的は、「プロダクトの寿命を延ばし、変更にかかるコストを長期にわたって低く一定に保つこと」にあります。
ユーザー要求とビジネス環境への継続的な対応
現代のソフトウェア開発において、「一度作ったら終わり」というプロダクトは存在しません。リリースした直後から、市場の変化、競合他社の動向、そしてユーザーからのフィードバックに合わせて、システムは常に進化し続ける必要があります(アジャイルな変化)。
確固たる設計基盤があれば、新しい機能の追加や既存機能の改善を、他の機能にバグを生じさせることなく、安全かつ迅速にデプロイし続けることができます。
トータルコストの大幅な削減
初期の設計段階で「どこに何を書くべきか」「どの機能とどの機能は切り離すべきか」のルールを明確にしておくことで、将来のエンジニア(数ヶ月後に忘却した自分自身を含みます)がコードを読み解く時間、修正の影響範囲を調査する時間、そしてテストする時間を劇的に減らすことができます。
設計とは、目先の数時間を節約するためのものではなく、「未来の数百時間を節約し、プロダクトが継続的に成長するための強力な投資」なのです。
4. 修正ループを完全に断ち切る!実務で使える3つの具体策
設計の重要性を理解した上で、具体的にどのように設計プロセスを進めれば修正ループを回避できるのでしょうか。明日からすぐに意識すべき3つの実践的なポイントを解説します。
(1) 規模や複雑さに応じた「適切なアーキテクチャ」の選択
必ずしも最新の高度なアーキテクチャを導入すれば良いわけではありません。プロジェクトの規模やビジネス要件、チームの技術レベルに見合った「設計の型」を選択することが重要です。
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小規模・シンプルなCRUDアプリ: まずは基本中の基本であるMVCパターンを徹底しましょう。「データベースとやり取りするビジネスロジック(Model)」「ユーザーに見せる画面UI(View)」「ユーザーの入力を受け取り、ModelとViewを繋ぐ処理(Controller)」という3つの責務を完全に分離します。これだけでも、「データベースの保存処理をViewのファイルに書いてしまった」というようなカオスを防ぐことができます。
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中規模・標準的な業務システム: MVCから一歩進み、レイヤードアーキテクチャを採用します。プレゼンテーション層、アプリケーション層、ドメイン層などに分け、各層が「自分より下の層にしか依存しない」という厳格なルールを設けることで、テストのしやすさが格段に向上します。
重要なのは、「この処理はどのファイルの、どのクラスに書くべきか」というチーム内の共通ルールを明確にし、設計時の「迷い」をゼロにすることです。
(2) コミュニケーションから「解釈の余地」を完全に排除する
設計フェーズでの「修正ループ」の多くは、クライアントやPO、PM、又はエンジニア間の「認識のズレ」から生まれます。人間は、曖昧な言葉を自分の都合の良いように解釈する生き物です。仕様定義や設計書において、解釈の余地を生む表現を徹底的に排除しましょう。
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✕ 危険で曖昧な表現: 「UIはユーザーが直感的に使いやすいようにする」 「検索処理はなるべく速く結果を返すこと」 「エラーが起きたらいい感じに画面に表示する」
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◯ 安全で具体的な表現(数値化・明確化): 「購入ボタンの配置は画面右下固定、色はマテリアルデザインのPrimary Color(#0055FF)とする」 「ネットワークタイムアウト(3秒)が発生した場合は、再試行を行わず、ユーザーに『通信環境の良い場所で再度お試しください』というトースト通知を3秒間表示する」
正常系だけでなく、「異常系(エラー時)の挙動」や「境界値(データが0件の時、最大値の時)」を設計段階で明確に定義することで、実装時の迷いがなくなり、レビューやテスト段階での手戻りを劇的に防ぐことができます。
(3) 「疎結合」と「高凝集」を死守する
修正ループの最大の敵は「密結合」です。密結合とは、あるクラスが他のクラスの実装詳細にべったりと依存しており、Aを修正するとBもCも壊れてしまう状態です。これを防ぐためには、「疎結合」かつ「高凝集」な設計が不可欠です。
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依存関係の逆転とDI(依存性注入)の活用: クラス内で別のクラスを「new」して直接インスタンス化するのは避けましょう。代わりにインターフェース(Interface)を定義し、具体的な実装は外部から注入(DI: Dependency Injection)する設計にします。これにより、データベースをモック(偽物)に差し替えて単体テストを行うことが極めて容易になります。
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単一責任の原則と高凝集: 「1つのクラス、1つの関数は、変更する理由が1つでなければならない」という原則です。例えば、「ユーザー情報を取得して、メールを送信する」という関数は2つの責任を持っています。これを「ユーザー取得」「メール送信」の2つのクラス/関数に分割し、それぞれ関連する処理だけをまとめる(高凝集)ことで、バグの発生箇所を瞬時に特定できるようになります。
5. レビュアーを味方につける「効果的な設計レビュー」の極意
ジュニアエンジニアは、「早くコードを書きたい」「早くタスクを終わらせて成果を出したい」という焦りから、設計書を適当に済ませ、設計レビューを軽視しがちです。しかし、ソフトウェア工学における有名な法則を忘れてはいけません。
「不具合の修正コストは、開発の後工程に進むほど指数関数的に増大する」という法則です。要求定義や設計段階で図面上のミスに気づいて修正するコストが「1」だとすれば、実装中なら「10」、テスト中なら「100」、リリース後に本番環境で発覚した場合は「1000〜10000」のコスト(損害賠償やブランドへの悪影響を含む)がかかります。
(1)V字モデルを意識した「テストからの逆算設計」
設計段階で必ず意識すべきなのが「V字モデル」の考え方です。自分が今おこなっている設計が、後工程のどのテストで検証されるのかを常にセットで考えます。
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要求定義 ⇄ 受け入れテスト:ユーザーのビジネス要件を満たしているか?
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システム設計 ⇄ 結合・総合テスト:外部システムや複数モジュール間の連携は正しいか?
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詳細設計 ⇄ 単体テスト:この関数のロジックは全ての分岐を満たしているか?
「この設計書の通りに実装した場合、自分はどうやってテストコードを書くか?」を設計段階で想像してください。もし「どうやってテストすればいいか分からない」と感じたなら、それは設計が複雑すぎる(密結合になっている)証拠であり、設計を見直す強力なサインとなります。
(2)視覚化によるレビューの効率化と品質向上
的確なレビューをもらい、抜け漏れを防ぐためには、設計の意図が「パッと見」で伝わる資料作りが求められます。ダラダラと長文で書かれた設計書は誰も真剣に読みません。必ず図や表を活用しましょう。
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シーケンス図: ユーザーの操作から、APIの呼び出し、データベースの保存、レスポンスの返却までの「時間の流れとシステム間のやり取り」を可視化します。
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ER図 (Entity-Relationship Diagram): データベースのテーブル構造と、リレーション(1対多などの関係性)を視覚化します。
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コンポーネント依存関係表: どのモジュールがどこに依存しているかを整理します。
【依存関係の整理例(悪い例と良い例の違い)】
設計段階で以下のような表を作るだけで、「注文管理が直接クレジットカード決済の実装に依存しているのはマズい。決済インターフェースを挟もう」といった建設的な議論が生まれます。
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コンポーネント名 |
役割 |
依存先(利用するもの) |
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ユーザー認証 |
ログイン状態・権限管理 |
なし(独立) |
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商品カタログ |
商品マスターデータの取得 |
なし(独立) |
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注文管理 |
注文の受付・ステータス更新 |
ユーザー認証、商品カタログ、決済インターフェース |
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Stripe決済アダプタ |
外部決済APIとの通信 |
決済インターフェース |
6. 【生々しい経験談】実務で直面した落とし穴と、具体的な回避策
理論だけでなく、実際の開発現場でジュニアエンジニアが陥りがちな生々しい失敗事例と、それを防ぐための改善策を紹介します。
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問題点 |
具体的な状況 |
|---|---|
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ユーザー要求の認識齟齬 |
「ログイン後、すぐに商品一覧が見たい」という漠然とした要望に対し、どの商品一覧なのか、並び順はどうするのか、といった詳細な確認を怠った。 |
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設計の甘さ |
画面遷移やデータ構造に関する詳細な設計を行わず、コードを書きながら進めたため、後から追加された機能との整合性が取れなくなった。 |
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テスト不足 |
開発者の想定だけでテストを進め、多様な利用シーンを想定したテストケースを作成しなかったため、予期せぬバグが頻発した。 |
この経験から、初期段階でのユーザー要求の「すり合わせ」と、V字モデルを意識した設計からテストまでの連携の重要性を痛感しました。後から「やっぱりこうしたい」という要望が出た際に、仕様変更が容易で、かつテストがしやすい設計を心がけることが、修正ループを避ける鍵だと学びました。
7. まとめ:未来の開発者(=未来の自分)への最高の投資
システム設計において「修正ループ」に陥ることは、ジュニアエンジニアであれば誰もが通る道です。実装の途中で「あれ、このデータの渡し方じゃ要件を満たせないぞ…」と気づき、コードを消しては書き直す日々は、本当に苦しく、自分のスキル不足を嘆きたくなる瞬間もあるでしょう。しかし、その苦しい経験と「手戻りの痛み」こそが、エンジニアとしての成長を最も加速させてくれる財産です。
修正ループから完全に抜け出し、シニアエンジニアへとステップアップするために、以下の4つの誓いを胸に刻んでください。
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「動けばいい」という甘い誘惑から脱却し、設計の目的は「未来の変更コストを下げること」だと心に刻む。
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MVCやレイヤードアーキテクチャなどの適切な設計手法を学び、DIなどを駆使して「疎結合・高凝集」なコードを徹底する。
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コミュニケーションから「解釈の余地」を排除し、図解を用いた設計書でチーム内の認識のズレをなくす。
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V字モデルを常に意識し、設計段階から「この機能の単体テスト、異常系テストをどう書くか」を逆算して考える。
これらを日々の業務で一つずつ、確実に実践していけば、あなたは必ず「終わらない修正ループ」を効果的に回避できるようになります。最初は設計図を書くのに膨大な時間がかかり、「コードを書いたほうが早いのではないか」と焦るかもしれません。
しかし、その「急がば回れ」の丁寧なプロセスこそが、バグの少ない強固なシステムを作り上げ、将来のキャリアをより豊かにし、チームから信頼される最強のエンジニアになるための唯一の近道なのです。焦らず、着実に設計スキルという一生モノの武器を磨き続けていきましょう。
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