目次
1. はじめに:システム構築における試験シートの重要性
現代のビジネスにおいて、ITシステムは業務遂行に不可欠な基盤となっています。そのため、システム構築においては、その品質を保証することが極めて重要となります。システムが予定通りの機能や性能を発揮できるか、期待される動作をするかなどを事前に検証する「システムテスト」は、品質保証のプロセスにおいて中心的な役割を担います。
システムテストを効果的に実施するためには、「試験シート」が欠かせません。試験シートは、テストの設計図とも言えるものであり、以下の点で品質保証に大きく貢献します。
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試験シートの役割 |
内容 |
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テストの網羅性・一貫性の確保 |
テストすべき項目を明確にし、漏れや重複を防ぎます。 |
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テスト実施の効率化・標準化 |
具体的な手順や期待結果を定義することで、誰が実施しても一定の品質を保てます。 |
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不具合の早期発見と原因特定 |
テスト結果を記録することで、不具合の発生箇所や原因の特定を容易にします。 |
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関係者間の認識共有 |
テストの目的や範囲、手順を共有することで、開発チーム全体の認識を統一します。 |
これらの役割を果たす試験シートを適切に作成・活用することで、品質の高いシステムを効率的に構築することが可能となります。
(1) システム開発における品質保証の必要性
現代のビジネスにおいて、システムは業務遂行に不可欠な基盤となっています。しかし、システム開発には潜在的なリスクがつきものであり、予期せぬ不具合や障害が発生する可能性があります。これらの問題は、業務の停止、顧客満足度の低下、さらには企業の信頼失墜といった深刻な事態を招きかねません。
そのため、システム開発プロセス全体を通じて、品質を確保し、リスクを低減するための「品質保証」が極めて重要となります。品質保証とは、単にバグを見つけるだけでなく、開発の初期段階から完成、そして運用に至るまで、一貫して品質を維持・向上させるための体系的な活動を指します。
具体的には、以下のような要素が品質保証によって達成されます。
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品質保証の目的 |
内容 |
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信頼性の向上 |
誤動作や予期せぬ停止を防ぎ、安定した稼働を実現する |
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セキュリティの確保 |
不正アクセスや情報漏洩のリスクを最小限に抑える |
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ユーザー満足度の向上 |
使いやすく、期待通りの機能を提供するシステムを構築する |
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開発コストの最適化 |
手戻りを減らし、開発期間内に高品質なシステムを完成させる |
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法令・規制遵守 |
関連する法律や業界標準に適合したシステムを開発する |
このように、品質保証は、システムがビジネス目標を達成し、ステークホルダーの期待に応えるために不可欠なプロセスなのです。
(2) 試験シートが品質保証に果たす役割
システム開発における品質保証は、ユーザーが満足できる製品を提供するために不可欠です。その中心的な役割を担うのが試験シートであり、品質保証プロセスにおいて多岐にわたる貢献をします。
試験シートは、具体的に以下の役割を果たします。
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役割 |
内容 |
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テストの網羅性確保 |
開発すべき機能や仕様を網羅的に洗い出し、テスト漏れを防ぐための「テスト観点シート」や「テスト仕様書」を作成することで、テスト範囲の抜け漏れを防ぎます。 |
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不具合の早期発見 |
具体的なテスト手順や期待される結果を明記した「テストシート(テストケース)」を用いることで、開発の初期段階で不具合を発見しやすくなります。これにより、修正コストの増大やプロジェクト遅延を防ぐことができます。 |
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品質の客観的評価 |
事前に定義されたテスト手順と期待される結果に基づき、実際の実行結果を記録することで、システムの品質を客観的に評価できます。これにより、開発チームだけでなく、関係者間での共通認識を醸成し、透明性の高い品質管理を実現します。 |
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手戻りの防止と効率化 |
テスト準備に必要な環境やデータ、ツールなどを明確にした「テスト準備シート」は、テスト実行前のミスを防ぎ、スムーズなテスト進行を支援します。これにより、手戻りを減らし、開発全体の効率向上に繋がります。 |
これらの役割を通じて、試験シートは、経済的損失、時間の浪費、信用の失墜といった、不具合がもたらす様々なリスクを低減し、高品質なシステム開発の実現に貢献します。
2. システム構築における試験シートの作成手順
システム構築における試験シート作成は、品質保証の根幹をなす重要なプロセスです。ここでは、その具体的な手順を解説します。
(1) テスト計画の策定 まず、テスト全体の目的を明確にし、テスト対象となるシステムや機能を範囲を定めて、より管理しやすい単位に分解します。
(2) テスト観点の洗い出しと整理 次に、システムを構成する機能要素、検証方法、入力・出力条件などを詳細に洗い出します。これらの要素をキーワード化し、「(テスト目的)のために(対象)の(部品)の(何)を確認する」といった形式に落とし込むことで、網羅的かつ構造化されたテスト観点リストを作成します。
(3) テスト仕様書の作成 テスト観点に基づき、テスト目的、対象、範囲を定義します。さらに、テストに必要な環境、データ、ツールを具体的に準備し、各テスト観点ごとに詳細なテスト項目を設計します。
(4) テストシート(テストケース)の作成 個別のテスト項目について、具体的な実行手順、入力値、そして期待される結果を明確に記述します。バックエンドの確認方法も具体的に明記することで、担当者によるばらつきを防ぎます。テンプレート化することで、作成効率を高めることができます。
(5) テスト準備シートの作成 最後に、テスト実行に必要な環境設定、データ準備、ツールのインストール状況などを確認するチェックリストを作成します。これにより、テスト開始時のミスや漏れを防ぎ、スムーズなテスト実行を支援します。
(1) テスト計画の策定
システム開発における品質保証の第一歩は、明確なテスト計画の策定です。テスト計画では、まず「テスト目的」を具体的に定義します。これは、システムが要求仕様を満たしているか、特定の機能が正しく動作するかなど、テストを通じて何を達成したいのかを明確にすることです。
次に、「テスト対象の範囲と分解」を行います。システム全体を一度にテストすることは難しいため、機能単位やモジュール単位でテスト対象を細かく分解し、優先順位をつけます。これにより、効率的かつ網羅的なテスト設計が可能となります。
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項目 |
内容 |
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テスト目的 |
システムが要求仕様を満たしているかの確認、特定機能の動作確認など |
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テスト対象の範囲 |
システム全体、機能単位、モジュール単位など |
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テスト対象の分解 |
テスト対象をより小さな単位に分割し、優先順位を決定する |
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テストの観点 |
どのような視点でテストを行うか(機能、性能、セキュリティなど) |
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テストの実施時期 |
開発工程のどの段階でテストを実施するか |
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テストの実施体制 |
テスト担当者、役割分担 |
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テストの完了基準 |
どのような状態になればテストが完了とみなされるか |
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テストのスケジュール |
各テスト工程の開始日、終了日、所要時間 |
これらの要素を明確にすることで、後続のテスト設計やテスト実施がスムーズに進み、品質の高いシステム構築につながります。
テスト目的の明確化
システム構築における品質保証の根幹をなすのが、試験シートの作成です。特に、テスト計画を策定する段階で「テスト目的」を明確に定義することは、その後の試験シート作成全体の方向性を決定づける極めて重要なステップとなります。テスト目的が曖昧なまま進めると、テストの網羅性が低下したり、本来確認すべき点が漏れてしまったりするリスクが高まります。
テスト目的を明確化する際には、以下の点を具体的に定義することが推奨されます。
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定義項目 |
内容 |
具体例 |
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何のために |
テストの最終的なゴール |
顧客要求仕様への適合性確認、バグの早期発見 |
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何を |
テストによって検証・確認する対象 |
特定機能の正常動作、性能要件の充足 |
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どのように |
テストの実施方法や評価基準 |
手動テスト、自動テスト、許容誤差の範囲 |
これらの要素を具体的に定義することで、テストのスコープが明確になり、効果的なテストケースの設計に繋がります。例えば、「〇〇機能において、△△の入力に対して□□の出力が正しく行われることを確認する」といった具体的な目的設定が、品質の高いシステム構築への第一歩となります。
テスト計画を策定する上で、まずはシステム全体を把握し、テストすべき範囲を明確に定義することが不可欠です。具体的には、システムを構成する機能やモジュールといった「部品」へと分解し、それぞれのテスト対象範囲を具体的に定めていきます。
例えば、ECサイトであれば、「商品検索機能」「カート機能」「決済機能」といった具合に、システムを機能単位で細分化します。さらに、各機能についても、
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分解要素 |
例 |
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主要機能 |
商品の表示、検索結果の表示 |
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付帯機能 |
絞り込み検索、並べ替え |
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画面遷移 |
検索結果画面から商品詳細画面への遷移 |
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データ連携 |
在庫情報との連携 |
このように、システムを細かく分解することで、テスト漏れを防ぎ、各テスト項目がどのような範囲をカバーするのかを明確にすることができます。この分解作業は、後続のテスト観点洗い出しやテストケース作成の基礎となります。
(2) テスト観点の洗い出しと整理
テスト観点とは、システムが正しく動作することを確認するために、どのような視点でテストを行うべきかを示すものです。このテスト観点を明確にすることで、テスト漏れを防ぎ、網羅的なテスト設計の基礎を築くことができます。
テスト観点を洗い出すためには、まずテスト対象となるシステムの「部品」や「機能」を分解し、それぞれの「検証方法」や「条件」を要素として抽出します。例えば、以下のような要素が考えられます。
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要素 |
説明 |
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機能要素 |
ログイン機能、登録機能など、具体的な機能 |
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検証方法 |
正常系、異常系、境界値、負荷など |
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条件 |
入力値、出力値、環境、状態など |
これらの要素を組み合わせ、「(テスト目的)のために(対象)の(部品)の(何)を確認する」という形式でテスト観点を具体化していきます。例えば、「正常なログインのために、ユーザーIDとパスワードが正しく入力された場合のログイン処理を確認する」といった具合です。このようにキーワード化・分類して名詞化することで、テスト観点が整理され、後のテスト仕様書作成へとスムーズに繋げることができます。
機能要素、検証方法、入力・出力条件などの要素の抽出
テスト観点を洗い出すためには、まずシステムを構成する「機能要素」を特定し、それぞれの「検証方法」を検討し、さらに具体的な「入力・出力条件」を明確にする必要があります。
例えば、ログイン機能においては、以下のような要素が考えられます。
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要素の種別 |
具体例 |
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機能要素 |
ユーザー認証、パスワード照合、セッション管理 |
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検証方法 |
正常系テスト、異常系テスト、境界値テスト |
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入力条件 |
有効なユーザーIDとパスワード、無効なユーザーID、パスワードの誤り |
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出力条件 |
ログイン成功、エラーメッセージ表示、セッション開始 |
これらの要素を網羅的に洗い出すことで、テスト漏れを防ぎ、より堅牢なシステム構築に繋がります。
キーワード化と分類による名詞化
洗い出したテスト観点を、より具体的で汎用的な名詞へと変換していく作業は、テスト観点シート作成の核となります。このプロセスにより、担当者間で認識のずれが生じにくく、網羅的なテスト設計の基礎を築くことができます。
具体的には、以下のような要素を抽出・整理し、キーワード化していきます。
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抽出要素 |
キーワード化の例 |
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機能 |
ログイン機能、検索機能、登録機能 |
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検証方法 |
入力値検証、出力値検証、画面表示 |
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条件 |
正常系、異常系、境界値 |
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ユーザー操作 |
クリック、入力、選択 |
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画面遷移 |
マイページへ遷移、トップへ戻る |
これらの要素を整理し、例えば「ログイン機能の入力値検証」や「検索機能の正常系」といった形で名詞化することで、テスト観点が明確になります。さらに、これらのキーワードを分類・グルーピングすることで、テスト観点の網羅性を高め、テスト設計の効率化を図ることが可能です。
「(テスト目的)のために(対象)の(部品)の(何)を確認する」形式への落とし込み
洗い出したテスト観点を、より具体的にテストケースへと落とし込むための重要なステップです。この形式に沿って記述することで、テストの目的、対象、そして検証すべき具体的な項目が明確になり、テストの網羅性と効率を高めることができます。
例えば、以下のような形式で整理します。
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テスト目的 |
対象 |
部品 |
確認する内容 |
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ユーザー登録機能の正常動作を確認する |
顧客管理システム |
ユーザー情報入力画面 |
必須項目の入力漏れがないか、各項目の入力値が仕様通りか |
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ログイン処理のセキュリティを確認する |
顧客管理システム |
ログイン画面 |
不正なID・パスワードでのログイン試行が拒否されるか |
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商品検索機能の精度を確認する |
ECサイト |
商品検索機能 |
検索キーワードに対して、関連性の高い商品が正しく表示されるか |
この形式を用いることで、テスト担当者は「何を」「どこで」「どのように」テストすれば良いのかを一目で理解できるようになります。これにより、テスト漏れを防ぎ、開発チーム全体で共通認識を持って品質向上に取り組むことが可能となります。
(3) テスト仕様書の作成
テスト仕様書は、システム構築におけるテスト実施の設計図とも言える重要なドキュメントです。これは、前段階で洗い出したテスト観点をもとに、具体的なテスト項目を詳細に定義していきます。テスト仕様書を作成することで、テストの目的、対象範囲、そしてどのような手順でテストを実施するのかが明確になり、テスト担当者間の認識のずれを防ぎ、一貫性のあるテスト実行を可能にします。
テスト仕様書に含めるべき主な項目は以下の通りです。
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項目 |
内容 |
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テスト目的 |
このテストで何を達成したいのか、どのような品質を保証したいのかを具体的に記述します。 |
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テスト対象 |
テストを実施するシステムや機能の範囲を明確に定義します。 |
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テスト範囲 |
テスト対象の中で、今回テストを行う箇所と行わない箇所を区分けして示します。 |
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テスト観点 |
前段階で洗い出した、テストすべき項目や視点をリストアップします。 |
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テスト項目(テストケース) |
各テスト観点に基づき、具体的なテスト手順、入力値、期待される結果などを詳細に記述します。 |
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テスト環境 |
テストを実行するために必要なハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク構成などの環境を定義します。 |
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テストデータ |
テストで使用する具体的なデータ(入力データ、参照データなど)を準備または定義します。 |
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テストツール |
テスト実行や結果分析に使用するツールを明記します。 |
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合否判定基準 |
テスト結果を「合格」「不合格」と判定するための基準を明確に定義します。 |
テスト仕様書を丁寧に作成することで、後続のテストシート(テストケース)作成やテスト実行がスムーズに進み、手戻りの削減にも繋がります。
テスト目的、テスト対象、テスト範囲の定義
テスト仕様書作成の第一歩は、テストの目的、対象、そして範囲を明確に定義することです。これにより、テスト全体の方向性が定まり、後続のテスト設計が効率的に進められます。
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項目 |
内容 |
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テスト目的 |
テストを通じて何を実現したいのかを具体的に記述します。例えば、「仕様通りの機能が動作することを確認する」「潜在的な不具合を発見する」といった、テストのゴールを明確にします。 |
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テスト対象 |
テストを実施するシステムやソフトウェアの範囲を特定します。機能単位、モジュール単位、あるいは特定のバージョンなど、テストで検証すべき具体的な対象を定義します。 |
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テスト範囲 |
テスト対象の中でも、具体的にどのような項目をテストするか、あるいはどのような項目はテストしないかを明確にします。これにより、テストのスコープが限定され、リソースの効率的な配分が可能になります。 |
これらの定義を明確にすることで、テスト担当者間での認識のずれを防ぎ、網羅的かつ効果的なテスト実施に繋がります。
テスト環境、テストデータ、テストツールの準備
テスト仕様書を作成する上で、円滑なテスト実行のために不可欠なのが、テスト環境、テストデータ、そしてテストツールの準備です。これらが整っていないと、テストの実施自体が困難になったり、予期せぬ問題が発生し、正確な結果を得ることが難しくなります。
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準備項目 |
内容 |
確認事項 |
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テスト環境 |
テスト対象システムが動作するサーバー、ネットワーク、OSなどのインフラ。 |
必要なスペックを満たしているか、本番環境に近い構成になっているか、セキュリティ設定は適切かなどを確認します。 |
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テストデータ |
テストケースを実行するために必要なデータ。 |
想定される様々なパターン(正常系、異常系、境界値など)を網羅できているか、データ形式は正しいか、個人情報などの機密情報は適切にマスキングされているかなどを確認します。 |
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テストツール |
テストの効率化や自動化に役立つツール。 |
テスト対象システムとの互換性はあるか、必要な機能は備わっているか、操作方法を理解しているか、ライセンスは問題ないかなどを確認します。 |
これらの準備を事前に丁寧に行うことで、テストの品質と効率を大きく向上させることができます。
各テスト観点に基づいたテスト項目の詳細化
テスト観点が洗い出されたら、それらを具体的に実行可能なテスト項目へと落とし込んでいきます。この詳細化のプロセスは、テスト仕様書の核となる部分であり、テスト実施の精度を大きく左右します。
テスト観点からテスト項目への詳細化では、主に以下の要素を明確に定義します。
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項目 |
内容 |
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テスト項目ID |
各テスト項目を一意に識別するためのID。管理やトレーサビリティに不可欠です。 |
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テスト項目名 |
テスト内容を簡潔に表す名称。どのようなテストを行うのかが一目でわかるようにします。 |
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テスト手順 |
テストを実行するための具体的な操作手順。誰が実行しても同じ結果が得られるよう、詳細かつ明確に記述します。例:「〇〇ボタンをクリックする」「△△の値を入力する」など。 |
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テストデータ |
テスト手順で入力する具体的なデータ。正常系、異常系、境界値など、テスト観点に応じて網羅的に準備します。 |
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期待される結果 |
テスト手順を実行した際に、システムが示すべき正しい動作や結果。画面表示、データベースへの登録内容、エラーメッセージなどを具体的に記述します。 |
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合否判定基準 |
期待される結果と、実際の実行結果が一致するかどうかの判断基準。 |
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備考 |
テスト実行上の注意点や、補足情報などを記載します。 |
これらの要素を、各テスト観点に対して漏れなく、かつ具体的に定義していくことで、網羅的で実行性の高いテスト仕様書が完成します。
(4) テストシート(テストケース)の作成
テスト仕様書に基づき、具体的な実行項目であるテストシート(テストケース)を作成します。テストシートには、個別のテスト手順、入力値、そして期待される結果を明確に記述します。これにより、テスト担当者は迷うことなく、確認すべき項目を正確に実行できます。
テストシートに含めるべき主要な項目は以下の通りです。
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項目 |
内容 |
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テスト手順 |
ユーザーがシステムを操作する際の具体的なステップを、画面遷移やボタンクリックなどのアクションと共に詳細に記述します。 |
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入力値 |
各手順においてシステムに入力するデータ(文字、数値、ファイルなど)を具体的に指定します。正常系、異常系、境界値など、テストしたい条件に応じた値を設定します。 |
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期待される結果 |
各テスト手順を実行した際に、システムが返すべき正しい動作や表示内容を明確に定義します。画面表示、データベースの更新、エラーメッセージなどを具体的に記述します。 |
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実際の実行結果 |
テスト実施時に、実際にシステムが示した動作や表示内容を記録します。期待される結果と一致するかどうかを確認します。 |
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合否判定 |
「期待される結果」と「実際の実行結果」を比較し、テストが成功したか(合格)、失敗したか(不合格)を判定します。 |
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備考(必要に応じて) |
テスト中に発見された問題点、特記事項、追加の確認事項などを記載します。 |
この詳細な記録は、後続のデバッグ作業や、システム品質の評価において不可欠な情報となります。特に、バックエンドの確認(SQL実行によるデータ確認やLinuxコマンドによるログ確認など)が必要な場合は、その手順と期待される結果も併せて明記することで、より網羅的なテストが可能となります。
バックエンド確認方法の明記
テストシート(テストケース)を作成する際には、個別のテスト手順や入力値、期待される結果を具体的に記載することが不可欠です。特に、システムが正しく動作しているかを深く検証するためには、バックエンド側の確認方法を明記することが重要となります。
バックエンド確認とは、システムが内部でどのようにデータを処理し、データベースに正しく反映されているかなどを直接確認することを指します。これにより、画面上の表示だけでなく、システム全体の信頼性を高めることができます。
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確認対象 |
確認方法の例 |
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データベース |
SQLクエリによるデータ参照、更新、削除の確認 |
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サーバーログ |
エラーメッセージや処理状況の確認 |
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API連携 |
API実行結果やレスポンスコードの確認 |
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OSコマンド |
ファイル生成、プロセス状態の確認 |
このように、テストシートにSQLコマンドやLinuxコマンドなどの具体的なバックエンド確認方法を明記することで、テスト担当者はより網羅的かつ正確にシステムの品質を確認できるようになります。これは、不具合の早期発見と、より堅牢なシステム構築に繋がります。
テンプレート化による効率化
テストシート(テストケース)作成においては、テンプレートの活用が効率化の鍵となります。あらかじめ項目が定義されたテンプレートを使用することで、各テストケースで記述すべき内容が明確になり、担当者間のばらつきも防ぐことができます。
表1:テストケースに記載すべき5つの要素
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項目 |
説明 |
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テスト対象 |
テストすべき具体的な対象(画面名、項目など) |
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テスト観点 |
そのテストで確認したいこと |
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テスト条件 |
与えるデータ、操作方法などのバリエーション |
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テスト手順 |
期待される結果が出るまでの作業手順 |
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期待値 |
どのような結果になっていれば合格か |
上記5つの要素を盛り込んだテンプレートを用意し、それに沿って作成することで、抜け漏れなく、かつ迅速にテストケースを作成することが可能になります。また、テスト実行日や実行者、実行結果といった列を設けることで、テストの進捗管理や結果の記録も容易になります。これにより、品質保証に不可欠なテストの効率が大幅に向上します。
(5) テスト準備シートの作成
テスト準備シートは、実際のテスト実施に際して、万全の体制を整えるための重要な確認リストです。このシートを作成することで、テスト実行中に発生しうる環境やデータ、ツールの不足といった問題を未然に防ぎ、スムーズかつ効率的なテスト進行を可能にします。
テスト準備シートには、主に以下の項目を含めることが推奨されます。
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項目 |
内容 |
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テスト環境の準備 |
テスト対象システムを動作させるためのサーバー、ネットワーク、OS、ミドルウェアなどのセットアップ状況を確認します。 |
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テストデータの準備 |
テストケースで必要となるデータ(初期データ、更新データ、異常系データなど)が、指定された形式と量で準備できているかを確認します。 |
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実行ツールの準備 |
テスト自動化ツール、デバッグツール、ログ収集ツールなど、テスト実行に用いるツールのインストール、設定、動作確認を行います。 |
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制約事項の確認 |
テスト環境の利用可能時間、外部システム連携の可否、ライセンスによる機能制限など、テスト実行に影響を与える可能性のある制約事項を再確認します。 |
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テスト実行手順の確認 |
テストケースの実行順序、データ投入・削除手順、システム設定変更手順など、効率的かつ正確にテストを実施するための手順を確認・共有します。 |
これらの項目を事前に確認し、テスト準備シートに記録しておくことで、テスト実行時の予期せぬトラブルを防ぎ、計画通りのテスト進行を支援します。
3. まとめ:品質の高いシステム構築のために試験シートを活用しよう
本稿では、システム構築における試験シートの種類、作成手順、そしてその重要性について解説してまいりました。試験シートの作成は、単に不具合を見つけるための作業に留まらず、システム全体の品質を保証し、開発プロセスを効率化するための不可欠なプロセスです。
試験シートの作成を通じて得られるメリットは多岐にわたります。
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メリット |
詳細 |
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品質保証の向上 |
テスト漏れを防ぎ、網羅的な検証を可能にします。 |
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不具合の早期発見・低減 |
開発初期段階での課題発見につながり、手戻りを減らします。 |
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開発効率の向上 |
テストの目的と手順が明確になることで、スムーズな実行と再テストが可能になります。 |
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属人化の防止 |
誰が担当しても一定レベルのテストができる標準化が進みます。 |
初心者の方でも、まずはテストの目的を明確にし、テスト対象を細かく分解していくことから始めましょう。そして、テスト仕様書などのテンプレートを活用し、標準化を進めることが、効率的かつ高品質なシステム構築への第一歩となります。試験シートを上手に活用し、信頼性の高いシステム開発を目指しましょう。